債務者区分の判断基準

では、債務者区分はどのような基準で判別していくのでしょうか。この判断基準の要素が、「財政状態」と「延滞状況」なのです。

「財政状態」とは、たとえば単年度赤字・連続赤字・借入過多・債務超過などをいい、「延滞状況」とは融資条件変更・延滞月数などをいいます。

一般的には、次表のような財政状態と延滞状況を判断基準とした債務者区分の相関表により判定されます。

延滞状況
財政状態
延滞なし
3ヶ月以内延滞

3ヶ月超6ヶ月

以内延滞

6ヶ月超延滞

債務超過

(2期連続)

破綻懸念

要注意

破綻懸念

要注意

破綻懸念
実質破綻

債務超過

(1期のみ)

要注意

破綻懸念

要注意

破綻懸念

要注意

実質破綻

赤字または

繰越損失あり

要注意

正常

要注意
要注意
実質破綻
債務超過・赤字・繰越損失なし
正常
要注意
要注意
実質破綻

この相関表も、各銀行独自で設定しています。

たとえば、この例の相関表で考えると、債務超過であれば延滞がなくても破綻懸念先とされるケースも出てきます。赤字であれば、それだけで要注意先とされてしまうということになるのです。

私が信用金庫監査の初年度に出会った衝撃のフレーズ「債務超過・延滞なし」というのは、この債務者区分を判断するうえでの基準に照らして、債務者がどの位置にあるかを金庫が判定していたときのフレーズだったのです。

「債務超過であるが延滞はないので、破綻懸念先ではなく要注意先と判断した」

ということを意味しているフレーズなのです。この相関表も、各銀行独自で設定しています。

自己査定の基準は銀行が独自で設定する

貸出金の自己査定とは、「銀行が自ら、自己に基準に基づいて」、自社の貸出金を査定することです。では、それはどんな基準であってもよいのでしょうか。

じつは、「金融検査マニュアル」で、そのあたりもしっかり記載されているのです。債務者区分の判断基準も、そこにちゃんと書かれています。したがって、銀行が独自に設定した自己査定基準も、検査においてそれがミニマムスタンダードを満たしているかどうかについて、チェックされるようになっているのです。

ただし、書かれてあるとはいえ、実際に自己査定作業を行っていく段階では事実認定の世界に入っていくわけで、したがって、自己査定基準上、判断基準となる数値基準を設定していることが多いと思われます。

貸出金の自己査定は全件やるのか?

さて、銀行は自社の融資先全件について、このような自己査定作業をやっているかというと、実はそうではありません。とてもじゃないですがそんなことは不可能であるし、効率的ではないのです。

全件できないからといって、サンプルでやっても仕方がありません。というわけで、自己査定作業を実施する融資先を、独自の基準で抽出する工程があるのです。その基準を一般的には「抽出基準」といわれています。

どういうところが抽出されるかというと、先ほどの相関表で判断基準となるような情報、たとえば赤字や債務超過の融資先・業績の急激に悪くなった融資先・条件変更を行った融資先など、銀行がそれぞれ設定した「一定の条件」に合致した融資先のみをシステム上で抽出し、それについて査定をすることとなるのです。

システムで抽出されるということは、当然、査定の俎上に上がることを意味しています。たとえ正常先であっても、抽出されることはありえます。逆に、抽出されない融資先はすべて正常先として判断されることを意味しているのです

俎上に上がるということは、その融資先を査定することであり、そのための時間と労力と説明資料が必要となってしまいます。

したがって、銀行の得意先係にとっては、自分の担当する先が抽出されないのがベストということになります。抽出されない一番の方法は、すくなくとも決算書上で黒字になっているということ。たとえ不良債権がそこに存在していたとしても、です。

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この記事を書いた人

勝野 弘志公認会計士・税理士
顧問先の契約継続率が100%、事業計画作成支援で関与先の約8割が黒字決算という名古屋の会計事務所所長。

志を持つ起業家を支援する『起業家支援会計士』として、全8回の事業計画書作成講座、【士魂商才プログラム(起業編)】を中心に、売上アップのための会計セミナーや無料ブログシステム「Wordpress」の活用、iMovieによる動画編集、コンテンツ作成などの各種勉強会を開催、好評を得ている。

http://www.hkcpa.jp/profile