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経緯-監査と税務の間で

自己紹介

私は平成3年3月、兵庫県立神戸商科大学(現兵庫県立大学)商経学部経営学科を卒業後、平成6年10月に公認会計士2次試験に合格しました。その年の10月、名古屋市内の監査法人伊東会計事務所(現みすず監査法人)に入所し、1年目は主として大手自動車メーカーの監査、2年目はその関連会社の監査、3年目は公開準備会社の監査に従事しておりました。

そして、同じく3年目の年から預金残高5000億円以上の信用金庫の監査が信用金庫法により義務付けられ、監査するほうもされるほうも手探りの状態であった初年度の信用金庫監査にも従事していました。

その後、平成10年3月に公認会計士3次試験に合格し、同4月に公認会計士登録を完了したことを機に、3年半勤めた監査法人伊東会計事務所を退職し、三重県内の監査法人に転籍しました。この事務所は、クライアントこそ少なかったものの、JASDAQ公開準備の監査をはじめ商法(現会社法)監査・信用金庫監査・学校法人監査があり、バラエティに富んでいて、なおかつ税務事務所も併設だったため、独立志向であった私のキャリアアップに最適だと考えたのです。

まとめると、平成6年からすでに12年以上いわゆる財務諸表監査に従事してきて、それこそ世界に名だたる超巨大企業の監査から地元信用金庫の監査までかかわってきたこととなるわけです。さらには税務事務所での仕事はさらに細かい仕事となります。

実はこの実務経験の中で、一番長いのが信用金庫監査となります。前職から数えて10年間、信用金庫監査に従事していたこととなります。こうして振り返ってみると、意外な感じですね。

信用金庫監査とは

さて、信用金庫監査を始めたときのこと。監査の一番のポイントはなんと言っても貸出金の自己査定と償却・引当でした。それはどういうことかというと、信用金庫が公認会計士監査の対象となったことと関連があるわけですが、早い話が金融機関の貸出金(つまりは融資)の評価を、これまでは国が算定してくれたのをこれから金融機関が自分で算定しなさい、ということでした。

少し詳しく説明しましょう。金融機関の商品は融資、つまり一般企業等への貸出金です。預金者から余剰資金を調達し、その資金を企業へ貸し出す。貸し出すときの利息が貸出金利(売上)で、預金者へ払うのが預金金利(仕入)。

金融機関にとって預金は、いつでも預金者に返済しなければならない負債であり、貸出金は約定により融資先から返済を受ける資産です。融資先はたくさんあって、金融機関にとっては融資先の倒産等による貸し倒れの危険がいつも付きまといます(信用リスク)。融資先の信用リスクの差が、融資先ごとの金利差になると考えられています。

さて、融資先が倒産した場合、貸出金はどうなるのか、というと、当然貸した金は返ってこないので、担保資産があればそれを処分して、それでも不足する部分は金融機関が損失をかぶることになります。金融機関はその損失を計算し、自社の決算書に織り込まなければなりません。しかし倒産の状況にもいろんな形態があって、それぞれいくら不足でその結果いくらの損失になるのか、は千差万別です。

この損失金額、各金融機関にその算定を任せておいてはどんな計算をされるかわかりません。したがって以前は、損失の計算は各金融機関がして、その結果を財務局へ持っていって承認をもらう。税務申告上もその金額は認められることとなっており、お上がすべての損失金額のお墨付きを与えてくれたのです。それが従前の金融行政でした。これを「不良債権償却証明制度」といっていました。

その行政方針は平成10年、180度方向転換されました。つまり、自分のところの貸出金は自分で評価しなさい、融資先の倒産による損失金額は自分で算定しなさい、それでもって税務申告もしなさい、すべて自己責任でやりなさい、ということ。

このように、自社の資産について自らその時価を査定し、その時価に基づいて貸倒引当金を設定し、決算書に織り込んで開示することを総称して「資産の自己査定」といいます。

自己責任の原則が金融機関にも導入されたため、それまで公認会計士監査の対象になっていなかった信用金庫についても、一定規模以上の金庫については(これを特定金庫という)監査を受けなければならないこととなったわけです。これが信用金庫監査です。

衝撃のフレーズ「債務超過・延滞なし」

というわけで、当時の私もいやおうなしに信用金庫監査のど真ん中に入ってしまったわけですが、そのポイントは前述したとおりやはり貸出金の自己査定です。そこで私はこの衝撃のフレーズに出会いました。

「債務超過・延滞なし」

このフレーズは、融資先の財政状態は債務超過だが返済金の延滞はしていない、だからこれは破綻状況にはない、ということを(金融機関側から見ると)意味しています。

貸出金の自己査定に当たっては、融資先の財務状況と融資の返済状況の両面から判定をすることになっています。特に返済状況が重要ポイントです。

しかし前記のように、上場会社ばかりを監査していた私にとって、「債務超過」会社に出会うことはまったくなかった(上場会社の子会社でまれに債務超過会社はあったが、親会社の支援がえられるものだからちょっと意味合いが違います)ので、正直言って、「債務超過=お金なし=当然倒産近し」という感覚しかありませんでした。相当悪い会社という以外、なにもない。そんな会社が「延滞がない」なんて、そんなわけあるかい!という感じです。だから、当時の私にとって「債務超過・延滞なし」なんて考えられなかったのです(参考までに、当時の同僚や上司も同じ意見でした)。

税務の仕事を始めて

ところが、平成10年9月に税理士登録をし、税務業務をやりはじめるようになってから、このような感覚は次第に失われていきました。通常業務をやっていると、債務超過の会社は結構普通にあります。特に多いのは役員からの借入金が多くて債務超過になっているケース。いわゆる役員持ち出しで、昔はよっぽど儲かったんだなぁとつくづくおもったりする、これならまだいいほうです。金融機関からの借入金が多い場合はどうしようもない、しかしそういう債務超過もあるわけです。しかしそれでも金融機関への返済の延滞はなかったりするのです。

また、都合10年間信用金庫監査をしていて、債務超過会社は相当あることも実感しています。債務超過にいたらないまでも、状況の悪い会社はいくらでもあるのです。

大手監査法人で上場企業の財務諸表監査だけをやっていたら、このような状況はまったく理解できていなかったと思います。頭では理解できても、「肌で」感じることはなかったはずです。

趣旨

この連載を始めようと思ったきっかけは、以上のようにいろいろな仕事上の経験に照らして、

「人はその立場により見方がぜんぜん違うものだ」

というのを痛感したからに他なりません。

立場というのはもちろん、企業経営者(会社)・顧問税理士・会計監査人(公認会計士)・金融庁・金融機関・クライアント等ですね。

幸いにも当時の私自身は、企業経営者からみれば顧問税理士の立場にあり、クライアントである金融機関からみれば会計監査人の立場にあり、なおかつ金融庁のヒアリングの対象にもなるということです。いろいろな立場の人の考え方・見方に触れる機会が非常に多くなりました。

独立開業を機に、このような仕事環境にあった私ができることはなにか、それはいろいろな立場からの見方を知っているだけに、それを何とか中小企業の経営(とくに会計実務)に生かせないだろうか、と考えたものです。

中小企業の経営にとって金融機関対策はなくてはならないもの。しかし、その方法が間違っているのではないか?というのが私の持論です。それを検証していくのも、この執筆のひとつの目的でもあります。

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