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自己査定とは(その1)

金融庁検査とは

さて、その金融庁検査とはいったいどのようなものでしょうか。「金融検査マニュアル」によれば、各金融機関についておおよそ次のようなことをチェックすることとなっています。

○ 経営管理(ガバナンス)体制
○ 法令遵守体制
○ 顧客保護等管理体制
○ 総合的リスク管理体制
○ 自己資本管理体制
○ 信用リスク管理体制
○ 資産査定管理体制
○ 市場リスク管理体制
○ 流動性リスク管理体制
○ オペレーショナルリスク管理体制
このうち、銀行の顧客である融資先との関連で重要な項目は「資産査定管理体制」です。

銀行が貸出金を始めとする自社の資産の自己査定とそれに基づく貸倒引当金設定の正確性を確保するためにどのような体制を整備しているのか、その結果、自己査定が正しく行われているかどうか、金融庁はチェックするのです。

ちなみに、この「金融検査マニュアル」は、検査官が金融検査にあたり判断基準とするものとして、金融庁が公表している通達のことをいいます。

貸出金の自己査定とはどういうものか

自己査定について、もう少し詳しく説明してみましょう。
自己査定とは、読んで字のごとく「自ら査定すること」です。貸出金の自己査定といった場合、銀行から見た貸出金(企業から見れば借入金)を、銀行が自らの基準でもって査定する(評価する)、ということにほかなりません。

ここでひとつ重要なポイントは、「銀行独自の基準」により評価する、ということになります。この点については後述いたします。

ところで、銀行が貸出金を査定する目的はなにかというと、それは適切な貸倒引当金を設定するためといえるでしょう。貸倒引当金とは、これまた読んで字のごとく、「貸出先の倒産等による融資の貸倒れによる損失に備えるために、当期に発生していると見込まれる損失についてあらかじめ費用計上しておく」ための引当金です。

一般の事業会社の税務会計では、貸倒引当金は税法基準により設定されることが多いと思われます。

具体的には、一般貸倒引当金については法定繰入率(製造業であれば一般債権金額の1000分の8など)により算定し、個別貸倒引当金については倒産のステージにもよりますが破産債権額の2分の1を設定する方法が通例となっています。

では銀行の貸倒引当金はどのように設定されるのでしょうか。それは、各貸出金についての自己査定の結果と深く関係しているのです。

貸出金の自己査定と償却引当との関係

貸出金の自己査定により、実は銀行は貸出先企業(銀行から見て債務者)をいくつかの種類に分類しています。その分類と意味合いは大まかに言えば次のとおりです。

○ 正常先・・・・・業況が良好で特段問題のない債務者
○ 要注意先・・・・今後の管理に注意を要する債務者
○ 破綻懸念先・・・経営難の状態にあり破綻の恐れが大きい債務者
○ 実質破綻先・・・深刻な経営難により実質的に経営破綻の状態にある債務者
○ 破綻先・・・・・法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者

貸出金の自己査定とは、要するに貸出先企業(債務者)をこの5つの分類のなかのどれに当てはまるかを、銀行が独自に評価することを言うのです。この5つの分類のことを「債務者区分」といいます。したがって、「自己査定の評価結果=債務者区分一覧表」となるわけです。

そして銀行の貸倒引当金は、上記5つの分類によりそれぞれ設定しなければならないことになっています。当然ですが、破綻の恐れの大きい貸出先ほど引当金を多く設定しなければなりません。

イメージで言えば、正常先・要注意先は一般貸倒引当金であり、予想損失率によって算定するのに対し、破綻懸念先・実質破綻先・破綻先は個別貸倒引当金であり、個別に算定することとなります。

貸出金の自己査定と償却引当:設例

わかりやすくするために、簡単な設例を設定しましょう。

A銀行が、B社・C 社・D社・E社・F社の5社にそれぞれ1億円の融資をしていると仮定します。これら5社の状況が以下のとおりだったとします。

会社名
債務者区分
担保資産の時価
予想損失率
A社
正常先
0.03%
B社
要注意先
5000万円
0.50%
C社
破綻懸念先
8000万円
D社
実質破綻先
9000万円
E社
破綻先
9000万円

A・B社の貸倒引当金については一般貸倒引当金として予想損失率により算定します。
A社については、融資金額1億円に正常先の予想損失率0.03%を乗じた3万円が貸倒引当金設定額です。B社については、融資金額1億円に要注意先の予想損失率0.50%を乗じた50万円が貸倒引当金設定額となります。

一般貸倒引当金は合計で53万円という計算です。

C・D・E社の貸倒引当金については個別引当金として個別に算定することとなります。

C社については、融資金額1億円から担保資産の時価8000万円を差し引いた2000万円が、回収不能見込額としての貸倒引当金となります。

D社・E社については、融資金額1億円から担保資産の時価9000万円を差し引いた1000万円が、回収不能として直接償却(つまり貸倒損失として費用処理)されるということです。

まとめると、このようになります。

会社名
融資額
担保資産の時価
貸倒引当金
貸倒損失
A社
1億円
3万円
B社
1億円
5000万円
50万円
C社
1億円
8000万円
2000万円
D社
1億円
9000万円
1000万円
E社
1億円
9000万円
1000万円

厳密に言えば、D社・E社についてはもう少し細かい計算をするのですが、わかりやすくするために簡略化しています。
ちなみに、ここで言っている貸倒引当金は、企業会計上の貸倒引当金です。税務上のそれとは必ずしも一致しません。

通常の税務会計では税務基準による貸倒引当金を設定しますが、銀行(のみならず一般の上場企業についても)では税務基準とは別の「金融商品会計基準」により貸倒引当金を設定しなければならないこととなっているからです。

したがって、たとえば正常先・要注意先の一般貸倒引当金は法定繰入率ではなく、予想損失率を算定し、それに基づいて計算することとなっているのです。

したがって、予想損失率が金融業の法定繰入率である1000分の3(又は貸倒実績率)を超える場合には、申告加算をすることとなります。つまり、法人税で認められる繰入限度額をこえて貸倒引当金を設定することとなるわけですから、その越える部分については、損金経理はしているけれども自己否認するということになります(早い話がその分の税金は払いますよ、という処理をするとうことです)。

このように、税務上の取り扱いと企業会計上の取り扱いが異なることを一般に「税務と会計の乖離」と呼んでいます(この点については後ほど詳述いたします)。

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