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税理士の役割

告白

ある日突然、H銀行の審査部から連絡があった。税務顧問先I社について、打ち合わせがしたいとのことだった。
このI社は当時、業況が非常に悪かった。バブルに踊らされた典型的な会社で、売上は年々減少し、資金繰りも大変だった。借入金額も相当額の残高があり、それも条件変更の繰り返しで一部元金返済猶予も受けていたくらいだ。その会社のメインバンクであるH銀行からの、しかも審査部からの連絡とあって、私は大体の予想がついた。
-自己査定上の問題に違いない。-

はたして、そうであった。H銀行は金融庁検査を受けており、I社の債務者区分について問題点指摘を受けたのだ。

つまり、H銀行は自己査定において、I社を要管理先(要注意先)に区分していたが、金融庁は破綻懸念先ではないか、というわけだ。担保保全率が低かったため、破綻懸念先になると償却引当も相当な影響を受ける。

債務償還可能性について

このときの債務者区分のポイントは、「債務償還の可能性があるのかどうか」であった。つまり、I社は今現在の借入金を将来本当に返済していくことができるのかどうか、できるとしたら何年で返済できるのか、ということを、数値でもって証明しなければならなかったのである。
検査官の試算では、I社の中期経営計画による利益水準をベースに考えると、債務償還年数が50年超となったらしく、このため破綻懸念の状況にあるではないか、ということだ。債務償還年数50年というのはとんでもない年数で、通常は(設備投資資金を除き)10年以内でないと話にならない。
この状態で、H銀行の審査部がやってきた。なんとかならないか、と。

経営計画を練り直す

このときの経営計画はI社社長が自ら作成したものだった。それを、H銀行審査部、H銀行得意先係、経営陣、そして私と、四者が練り直すこととなった。
債務償還年数を10年以内にしなければならないので、それが答えとなる計画を作るのだ。これができなかったら、I社は破綻懸念先に落とされる、その結果新規融資はできなくなってしまう、相当なプレッシャーだ。
相当な時間を費やした。何度も何度も打ち合わせをした。時期は確定申告作業のときだった、そんな中で、とにかくこのI社案件を最優先して業務を行っていた。

結果はどうか。債務償還年数10年の経営計画は完成し、それを達成するためのリストラ案も出来上がった、しかし、検査官には通用しなかった。経営計画の実現可能性に疑問が残るとして、受け付けられなかったのだ。その結果、I社は破綻懸念先との判定を受けた。

コンサルティング業務

このときの私は、かなりI社の経営方針の決定に深くかかわり、私の意見は会社の意思決定に大きな影響を与えていたと思う。経営方針とは、すなわちリストラのことだ。
事業再構築という意味のリストラではない、まさに人員削減の意味のリストラだ。しかし、結局のところその計画はその後実行に移されることはなかった。金融庁の見方は正しかったのかもしれない。

時間がなさ過ぎたのだ。もっと早くから着手していれば、違った結果になった、そう確信している。

今回の件で私は特にコンサルティングフィーをとるつもりはなかった。そしてすべてが終わろうとしていたとき、H銀行の得意先係に、私はこういわれた。

「今回の件で報酬をとらないのですか?これだけ動いたのですから、相当なコンサルティング報酬を取るのが普通ですよ。」

しかし、私としては初動が遅かったと思っている。もっと早くからこうしたことができていれば・・・、という後悔の念のほうが強かった。そこまで深くI社に入り込むことができなかった、という思いだ。

自責の念

それだけではなく、もうひとつ、後悔していることがあった。I社の粉飾決算だ。利益を多く見せかけるため、何年も前に在庫と売掛金を操作していたのだ。

これは完全な金融機関対策であった。赤字になっては絶対にいけない-そういう状況のなかでの苦肉の策であった。翌年には操作分を戻すことを条件に、私は社長からの要望を受け入れてしまったのだ。

H銀行が事務所にやってきたときには、H銀行はその事実についてすでに百も承知だった。ちゃんと分析済みで、実態修正をしてあった。なんのことはない、黒字にして、払わなくてもいい法人税を払ってまでした銀行対策は、意味を成してはいなかった。

決算書というのは、というより、数字というものは、勝手に一人歩きをしていくものらしい。一度粉飾をして本当の数字というものが見えなくなってしまうと、経営者の頭の中にはその粉飾数値が残らないのだ。

-「のど元過ぎれば熱さを忘れる」-

粉飾なんてマイナスの影響があるだけで、本当に何の意味もない経営者の自己満足だ。

税理士の役割

中小の同族会社の場合、決算はほぼ顧問税理士が組むことになります。そのなかで、粉飾の依頼は結構あるでしょう。

伝票1枚でできてしまう粉飾決算。

顧問税理士の役割は、粉飾をNOと言い切ることです。そうなるまえに、しかるべき手を打つように、指導していくことなのです。

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